【専門家が解説!】障害年金の遡及請求とは?
みなさん、こんにちは。上丸社会保険労務士事務所の上丸玲子です。
今回は障害年金の遡及請求についてお伝えいたします。
遡及請求とはどういった制度なのか?
自分は遡及請求ができるのか?
遡及請求は難しいのか?
受給しやすいのかどうかについてお伝えいたします。
遡及請求について不明点がある方、遡及請求をするべきか悩んでいる方のお悩みが解決できると思いますので、ぜひご参考になさってください。
目次
1、 遡及請求とはどんな制度なのか
2、 遡及請求をするために必要なこととは
3、 遡及請求をすぐにした方がよい理由
4、 当事務所の遡及請求の相談事例・サポート内容
1. 遡及請求とはどんな制度なのか
障害年金の申請方法は、3種類に分けられます。遡及請求はそのうちの障害認定日の時点にさかのぼって請求する方法のことです。
①認定日請求(本来請求)
障害認定日の時点で障害等級に該当するかどうか審査してもらう請求を「認定日請求(本来請求)」といいます。
②遡及請求
障害認定日に障害等級に該当していたけれど、障害年金のことを知らずに当時は請求していなかったという人などは、障害認定日の時点にさかのぼって請求することができます。これを「遡及請求」といいます。
遡及請求は必ず「障害認定日」にさかのぼって請求します。1番症状が悪かった任意の時期にさかのぼって請求することはできません。
また、障害認定日が5年以上前でも、さかのぼって受給できるのは時効により5年分のみです。
③事後重症請求
障害認定日の時点では症状が軽く障害の状態に該当しなくても、あとから障害等級に該当する程度の症状になった場合、該当するようになったときに請求することができます。これを事後重症請求といいます。
ただし、事後重症請求は65歳までにしなければなりません。
2.遡及請求をするためのポイント
遡及請求が自分はできるのか気になる方は、以下の4ポイントをクリアできれば請求できる可能性が高いので参考にしてください。
①認定日から3ヵ月以内の診断書と現在の診断書の2枚を提出
②その診断書の内容がそれぞれの障害認定基準を超えている
③保険料納付要件を満たしている
④初診日要件を満たしている
3.すぐ申請した方がよいのか
自分が遡及請求をする条件が整っているかわかったところで、ではいったいいつごろ遡及請求をするべきかお悩みかもしれません。
結論は、「なるべく早く遡及請求は行った方がよい」です。
理由は2つあります。
①カルテが処分されてしまう可能性があるから
カルテの保管期限は法律によって5年と決まっています。治療が完結してから5年を過ぎてしまうとカルテが廃棄されてしまう可能性があります。
②障害認定日が5年以上前であれば、遡及分が時効でどんどん消えて行ってしまう
支払いできる年金の時効が5年と決まっています。請求の時から5年前以降の分が支払いの対象となっています。
4.当事務所での遡及請求での相談事例
相談状況
初診日は厚生年金加入の方で、傷病名は糖尿病。今の医療機関は3つ目の医療機関です。
初診日は平成26年1月頃。体重減少と嘔吐、倦怠感の為、近所の医療機関を受診されました。そこの医療機関では血液検査をされましたが、特に異常はないと言われたとのことです。この傷病の初診日はこの医療機関ですが、すでに廃院していて初診日の証明が取れません。
最初の受診から1週間ほどたっても症状が改善しないため、総合病院を受診されました。その病院を受診した時に、前の医療機関の検査結果を持っていったと記憶しているとのことでした。
サポート内容
2番目の医療機関のカルテの開示請求をして、初診の医療機関の検査結果のコピーがあれば道が開けると思いました。その結果、開示請求の中に検査結果のコピーがあり、初診日を確定することができました。
初診日の確定できる書類として、検査結果のコピーとお友達の証明「初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)」、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を揃えて提出しました。2番目の医療機関の受診が初診日から1年6ヶ月の障害認定日だったので、その時点での診断書を作成してもらい、現在受診している医療機関で、現在の症状の診断書を作成してもらいました。
障害の認定は障害認定日時点まで遡りますが、年金の支払いの時効は5年で消滅するため、5年以上前の認定日があっても、5年以上前の期間については支払いはありません。
遡及請求の注意点は、請求が遅くなるとこの事例のように廃院している場合やカルテの保管期限の関係で、初診日の証明が難しくなります。
受診した日などの証明である「受診状況等証明書」は証明日が古くても使えますので、将来障害年金を請求するかも?と思ったときは、取得しているというのもありですね。
障害年金の請求は特にお一人お一人違います。その人に最善の方法でサポートしていきますので、ご安心くださいね。